「食べることは楽しい」
そんなフレーズを耳にしたことはありませんか?
何でしょう、食べることが楽しいって。
「ダイエットで大変なのに、楽しいなんて言ってられないわ!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
今回私がお伝えしたい楽しさとは、少し違います(笑)。
最近食事をしながら「楽しい」と思えたときのこと、覚えてますか? または、そのとき食べたもの、覚えてますか?
食べるという行為に楽しさを見いだすのは、生命体の中では人間だけだと思います。
なぜ、それが必要なのでしょうか。
「食べることを楽しむ」とは?
生命の維持だけが目的であれば、食べることをしなくてもいいし、何も美味しさを追求しなくても良いだろうし、溢れかえるサプリメントだけでも良いはずです。
なぜ、食べることに楽しさが必要なのでしょう。
平成17年に食育基本法が制定され、知育・体育・道徳と並んで「食育」という新しい分野に注目が集まりました。食べるということで人間の身体はもとより、精神性も関わってくるということが見直されたからです。
とりあえず、お腹をいっぱいにすることを目的にしてはいけない。
食育基本法の方針は「*6つのこしょく」という言葉の中でも表現されています。
(*6つのこしょくとは:現在の家庭の食卓の問題点をわかりやすく表した「孤食」「個食」「固食」「粉食」「小食」「濃食」が、6つの「こ食」です)
お母さん、”「食べる」は「人を良くする」こと”です。
食べながら、その味について語り合い、
食べながら、その日の出来事を語り合う。
食べながら、食事の作法のしつけを行う。
そう、食卓は食を楽しむ場であり、家族のコミュニケーションの場でもあり、
さらに1つの教育の場でもあるはずです。
その日の楽しかった出来事を話し合うのは、大切な時間ではないでしょうか。
私のイメージではサザエさんのような笑顔の絶えない、昔からある日本人の家族団らんの姿です。
(ただ、TVを見ながらや携帯をしながらの”ながら食べ”は論外です・・)
とくに気をつけてほしいことは、子ども1人での食事です。
私たち大人でも、1人でする食事はどこか味気ないものではないでしょうか?
食事は誰かと一緒に食べると、よりおいしく、そして楽しく感じたりしませんか。
これは私が一番気を付けてきたことでもあります。
どんなに忙しくても、子どもとの食事の時間だけは大切にしてきました。
顔を見ながらその日のことを聞いたり、まぁ・・時には仕事柄、「今日のごはん(お米)どう思う?」と意見を求め合ったり(笑)、
そんな楽しい食卓をつくるように心がけてきました。
私たち親子が食べることを大切にし、育み、会話を楽しんできたことで得たことは何だと思いますか?
私たちは親子でもきちんと意見を交換することができます。
そして、食材の味もきちんと把握し表現することができます。
お米の些細な味を気づくことができる繊細な感覚を身につけました。
得意分野は異なるものの、子ども達と囲んだ楽しい食卓では、子ども達の優位性を大きくし、自信を付けることにもなったようです。
食べる楽しさは教育
食べる楽しさを見つけるという方法はいくつかあると思います。
コミュニケーションの場として会話を楽しむということはもちろん、
よく噛む(咀嚼)することで食材の味を知り、その変化を楽しむ舌を持つことができます。
食材のことを知る場所にすることで、自然や作り手に感謝できる豊かな心を育むことができますし、食卓に並ぶごはんや器など、目で色や形を楽しむ感覚を身につけることもできます。
手で持ったり香りを嗅いだり・・そう、食べるという行為は五感を育てることなのです。
五感を育む、というそれだけを考えると「習い事は何をさせたら良いの!?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
いいえ、五感を育むということは、まずは家庭の食卓から今日すぐにでもできることです。食事を、 食べること、を楽しみましょう 」♪
私が「食べることを楽しむ」ということにこだわるのには、意味があります。
以前、お米講座をした際のことです。
お米講座ではお米の基本をお伝えします。それは、お米の炊き方や選び方、洗い方、などです。
講座終了したときに、受講生の1人がいいました。
「食の基本を知るって大切なんですね!私、今日からいろんなことに気づけそうです!」
と喜びいっぱいの顔で教室を後にしました。その顔と言葉を、今でも鮮明に覚えています。
その昔、子ども達の顔を見ながら「今度はもっと良いものを作ろう」と、食材選びや調理法に気を配ってみたことを思い出しました。
「食べることを楽しむ」というのは、子どもの五感を育むだけでなく、親である作り手の”相手を思いやる気持ち”も育てることになっていました。
家族団らんで食事を楽しむということは、食の基本です。
あなたは「食べる」という人間として基本的なこと、楽しんでいますか?